木風舎 自然を感じるネイチュアリングスクール

雪の森を歩こう

毎日新聞に連載された、橋谷晃の「雪の森を歩こう」を再録しました。


ネイチャースキーってなんだろう

毎日新聞日曜版に連載された、橋谷晃の「雪の森を歩こう」を再録します。

ネイチャースキーって、最近よく聞く言葉だけれど、いったい何だろう? と思っている方も多いかもしれない。 ひとことで言えば、スキーを使った雪の散歩やハイキングだ。 森や高原を、スキーを履いて自由気ままに歩き、滑り、そしてくつろぐ。 美しい自然に出会い、ふかふかの雪の感触を楽しみ、 森のいのちの存在を感じる。

雪の自然は、さまざまな素晴らしい情景を、私たちに見せてくれる。 紺碧の青空に映える、光輝く樹の梢。 足跡をつけるのが罪にさえ思えるような、純白の雪原。 無数のクリスマスツリーのような、綿帽子をかぶった針葉樹の森。 点々とどこまでも続く、動物たちの足跡。 そんな自然からの贈り物に出会うために、 スキーという遊びごころたっぷりの手段を使う、 それがネイチャースキーだ。

春〜秋にハイキングや登山、 また自転車やカヌーなどで自然を楽しんでいる人は多い。 しかしこれらの遊びは、冬はよほど好きでないと、 オフ・シーズンになりがちだった。でも冬も自然を楽しみたい、 そんな人たちにとっての、「冬だからこそできる、自然の中での遊び」 として注目され始め、今や静かなブームとなって、確実に広がりつつある。

スキーで歩くといっても、 あのギブスをつけたようなゲレンデ用のスキーを想像しないでほしい。 軽くて、かかとが上がる、ハイキング用のスキーを使う。 私の場合は、滑走面に歩くための刻みがついたタイプの、 テレマークスキーという道具を使っている。 クロスカントリースキーを少し幅広にして、エッジをつけ、 ブーツをしっかりさせたもの、と思っていただければいいだろうか。 下りもなかなか安定していて、滑りも楽しめるので、 起伏の多い日本の地形にはとても使いやすく、おもしろい。

このスキーを履いて森の中を歩いていると、何だか不思議な気分になってくる。 他の季節に森を歩くのとは、あきらかに違う感覚だ。 自由で、開放的で、しかも森の懐深く抱かれているような感覚。 考えてみれば他の季節は、多くの場合は歩道という拓かれた人工空間から、 森を眺めている状態だ。けれども冬は、行動を制約していたヤブは雪の下。 行こうと思う方向に、どこへでも行くことができる。森の外側から内側へ。 行動は線から面へ。森に住む動物たちと同じように軽やかに動けるのは、 じつに新鮮な感覚だ。そしていつの間にか、自分と周りの自然との心の垣根が、 ずいぶん低くなっていることに気がつく。樹も、動物たちも、鳥たちも、 そしてこの自分も、すべてどこかでつながった、 いのちの輪の一部なんだなあと、全身で感じられる。

何はともあれこれから毎週日曜日、 この紙面でご一緒にネイチャースキーを楽しんでみませんか?。

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