木風舎 自然を感じるネイチュアリングスクール

雪の森を歩こう

毎日新聞に連載された、橋谷晃の「雪の森を歩こう」を再録しました。


子供たちの視点でいろいろ発見

毎日新聞日曜版に連載された、橋谷晃の「雪の森を歩こう」を再録します。

「ネイチャースキーは子供でもできますか?」 とたずねられることも多い。年齢に応じた場所を選べば、 もちろんOKだ。ゲレンデスキーの場合、 滑ること自体が目的なので、家族の間にスキー技術の差があると、 だれかが我慢しなければいけないことが多い。 しかしネイチャースキーは自然が目的なので、 のんびり立ち止まっている間が、けっして「待ち時間」ではなく、 なかなかいい時間なのだ。だから家族や、 スキー経験の違う友人どうしで楽しむには、結構いい遊びだと思う。

おおよそ何才ぐらいから始められるかは、 個人差があるのでなんとも言えないが、 もし家族だけのペースで楽しめるのなら、 少なくとも小学校に上がれば大丈夫だろう。ただ、 あくまでも子供の興味に応じて、ゆっくりと。 いちばん失敗するパターンは、両親が自分たちの興味とペースで、 あそこも行きたい、ここも行きたいと、 子供を引き回してしまうこと。結局、 脇目もふらずにただ距離だけ歩くことになってしまい、 子供は二度と行きたくないと言い出しかねない。

子供の興味はおとなとは当然違うから、 いい景色を見てのんびりしたり、 ある方向に向けてまっすぐ進んだりということはまずない。 凹凸を見つけてアクティブな遊びをしてみたり、 一つの足跡をずっと追っていったり、 木の枝に積もった雪を落として遊んだり。だからできれば、 子供は複数いたほうが楽しい。一人っ子の家族は、 ほかの家族を誘ってみるといいかもしれない。 その間こちらはバードウォチングやコーヒータイムなどを楽しみ、 たまには雪合戦や雪落としに加わったりして、 好きなように遊んでいればいい。

森の動物たちの痕跡などのヒントを投げかけると、 あとは子供ならではの視点で、 じつにさまざまなものを発見してくれる。森のあちこちで、 「〇〇があったよー。」「これ見てー。」の声がこだまする。 そしていつの間にかまた、最長不倒記録大会や、 雪合戦バトルが展開されることになる。 運よくウサギやリスが出現してくれれば、もう大騒動だ。

ゲレンデスキーを1回やったら全然うまくいかなくて、 「もう絶対スキーはやらない。」と言い張っていた男の子が、 母親に連れられて来たことがある。彼はその日の午後、 何人かの子供たちとともに、 この遊びの輪の中に夢中で没頭していた。彼にとって、 うまく滑らなければいけないゲレンデは、 遊びではなかったのかもしれない。もちろんやり方によっては、 この逆もあり得るのだが。

こんな遊びを通して、彼らの原体験が少しずつ積み重ねられていけば、 それでいいのだと思う。キツネやリスやカモシカが、 図鑑やテレビの世界でなく、同じ場所と時間を共有し、 同じ空気を一緒に吸って、 ここで生きて暮らしているんだということを、 実感できる機会はあまり多くはないのだから。

(1997年12月14日掲載)

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